「たかが便秘」と思っていませんか?

便秘は、多くの人に見られるため、単なる「お通じの悩み」として軽視されがちですが、実は心身にさまざまな悪影響を及ぼす慢性疾患のひとつです。現代人の約2割が便秘に悩んでいるとされ、特に女性や高齢者、デスクワーク中心の方に多く見られます。
今回は、便秘がもたらす健康被害を西洋医学と東洋医学の両面から解説し、日常でできるセルフケアや鍼灸のアプローチについてご紹介します。

🍀 便秘が引き起こす心身のトラブル
西洋医学の視点から

  • 腸内環境の悪化:便が長時間腸内にとどまることで悪玉菌が増殖し、腸内フローラのバランスが崩れます。
  • 肌荒れ・口臭:腸内で発生した有害ガスが血中に取り込まれ、肌や呼気に影響を及ぼします。
  • 自律神経の乱れ:腸は「第二の脳」とも呼ばれ、腸内環境の悪化は不安感やイライラ、集中力低下にもつながります。
  • 痔や大腸疾患のリスク:排便時のいきみが続くと、痔や大腸ポリープの原因にもなり得ます。

東洋医学の視点から
東洋医学では、便秘は「気・血・津液(しんえき)」の巡りが滞ることで起こると考えます。主なタイプは以下の通りです:

  • 気滞型:ストレスや緊張で気の流れが滞り、腸の蠕動運動が低下。イライラやお腹の張りを伴います。
  • 血虚型:血の不足により腸が潤わず、便が乾燥して出にくくなります。女性や産後の方に多いタイプ。
  • 寒湿型:冷えや湿気により脾胃(消化器系)の働きが低下。軟便と便秘を繰り返すことも。
  • 陽虚型:加齢や体力低下により「腎陽」が不足し、全身の代謝が落ちて便が停滞します。

🍀 便秘解消のためのセルフケア
食事療法

  • 水溶性食物繊維:海藻類、オクラ、納豆などは腸内の善玉菌を増やし、便を柔らかくします。
  • 発酵食品:味噌、ぬか漬け、ヨーグルトなどで腸内環境を整えましょう。
  • 水分補給:朝起きてすぐの白湯や常温の水は、腸のスイッチを入れるのに効果的です。
  • 冷たいもの・甘いものの摂りすぎに注意:脾胃を冷やすと消化吸収力が落ち、便秘を悪化させます。
    運動療法
  • 腹式呼吸:横隔膜を動かすことで腸をマッサージし、蠕動運動を促進します。
  • 軽い有酸素運動:ウォーキングやラジオ体操など、毎日15〜30分の運動が理想的。
  • 腸もみ:おへその周囲を時計回りに優しくマッサージすることで、腸の動きをサポートします。

🍀鍼灸では

鍼灸では、大腸の問題だからと言ってお腹に鍼を刺すわけではありません。お腹に浅い鍼を施すこともありますが、手足のツボを使ったり、腰を緩めることが多いです。上記したように便秘にもいろいろなタイプがありますので、その方に合ったツボに適度な刺激が入った時には、お腹の緊張が取れて自然に緒の蠕動運動がおこります。便秘は習慣化している方が多いので、お薬のちからに頼ることもあるでしょうが、やはり自然に腸が動いた方が良いですよね。便秘のツボを刺激すると、肩こりや腰痛も楽になるものですよ。

🍀 最後に:便秘は「体からのサイン」
便秘は、単なる排便の問題ではなく、心身のバランスの乱れを映し出す鏡です。ストレスや生活習慣の乱れ、冷えや運動不足など、さまざまな要因が絡み合っています。
当院では、東洋医学の知見と現代医学の視点を融合させたアプローチで、便秘の根本改善を目指します。お一人おひとりの体質や生活背景に合わせた施術とセルフケアの提案を行っていますので、お気軽にご相談ください。