雨の前に頭が重くなる、台風が近づくと古傷が痛む、季節の変わり目にめまいがする.、、、それは気のせいではありません。気圧や気温、湿度の急激な変化によって起こる体調不良は、「気象病(天気痛)」として知られています。

当院では、このつらい気象病に対し、西洋医学と東洋医学の両面からアプローチし、根本的な改善を目指します。

1. 西洋医学から見た「気象病」のメカニズム

気象病の主な原因は、自律神経の乱れと”内耳(ないじ)”への気圧刺激です。

① 気圧変化を感知する「内耳のセンサー」

耳の奥にある内耳には、気圧の変化を感知するセンサーがあります。このセンサーが敏感すぎると、わずかな気圧の低下でも過剰に反応し、その信号が脳に伝わります。

② 自律神経の混乱

内耳からの過剰な信号は、体の調子を自動でコントロールする”自律神経(交感神経と副交感神経)”のバランスを乱します。

  • 交感神経が優位に:自律神経が乱れると、血管が収縮したり、炎症物質が分泌されたりすることで、頭痛、肩こり、めまい、だるさといった不調となって現れます。
  • 「痛み」の引き金に:特に女性や、もともと片頭痛持ちの方、低血圧・貧血気味の方は、自律神経の調整能力が追いつかず、症状が出やすい傾向があります。

2. 東洋医学から見た「気象病」と鍼灸によるアプローチ

東洋医学では、気象病を「外からの気象の変化(湿邪・風邪など)」によって、体内の「気」「血」「水」のバランスが崩れた状態と考えます。

① 「水毒(すいどく)」の改善

気象病の多くの症状は、体内の水分の巡りが滞った”「水毒(水滞)」”と関連しています。特に湿度の高い季節に、むくみやめまい、重だるさが出やすい方はこのタイプです。

  • 鍼灸の役割:鍼やお灸で、水分の代謝に関わるツボ(豊隆、水分、太谿など)を刺激することで、体内の余分な水を排出し、めまいやむくみを解消します。

② 「気」の巡りを整え、自律神経を安定させる

気圧の変化によるストレスで、「気」の流れが滞り(気滞)、イライラや不安感、頭痛を引き起こします。

  • 鍼灸の役割:自律神経の働きを整えるツボ(内関、百会など)を中心に施術し、「気」の滞りを解消します。これにより、交感神経の過剰な興奮を抑え、心身のリラックス(副交感神経優位)を促します。

③ 内耳の血流と首肩のこり解消

気象病の鍵となる内耳の血行不良や、首・肩の緊張を和らげます。

  • 鍼灸の役割:内耳と関係の深い耳まわりのツボ(翳風、完骨)や、首肩の血流を良くするツボ(天柱)にアプローチすることで、脳への血流も改善し、頭痛やめまいの根本的な緩和を目指します。

3. 自宅でできるセルフメンテナンス

鍼灸による体質改善と並行して、ご自宅で毎日セルフケアを行うことで、より早く気圧の変化に強い体を作ることができます。

即効性のある対処法】耳まわりマッサージ

内耳の血流を良くする「くるくる耳マッサージ」を実践しましょう。

  1. 両耳の上・中央・下を、それぞれ5秒ずつ軽く引っ張ります。
  2. 耳を軽く引っ張りながら、後ろ方向にゆっくり5回回します。
  3. 手のひらで耳全体を覆い、後ろ方向にゆっくり5回円を描くように回します。

【体質改善のための習慣】自律神経を整える

ぬるめのお風呂:38℃〜40℃のぬるま湯に10〜15分浸かり、副交感神経を優位にしましょう。シャワーで済ませず、湯船に浸かる習慣が大切です。

規則正しい生活:毎日同じ時間に起床・就寝し、自律神経のリズムを整えます。特に朝の光を浴びることは、自律神経のスイッチを整えるために重要です。

腹式呼吸:緊張しているときこそ、吸う時間の2倍かけてゆっくりと息を吐き出す深い呼吸を意識しましょう。

気象病は体質による影響が大きい不調ですが、決して諦める必要はありません。当院では、東洋医学的な視点からあなたの体質を細かく判断し、気象の変化に左右されない健康な体づくりをサポートいたします。

ご自身の気象病の傾向が分からずお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。