60代男性の症例をご紹介します。
若い頃に野球をされていた方なのですが、肘の手術後の後遺症で、肘関節が伸びきらなくなってしまいました。伸ばす動きだけでなく、曲げる動作にも制限があり、ネクタイを結ぶ動作にも不自由を感じるとのことです。

そんな固まった肘が、施術一回でこんなに動くように!

皮膚を軽く引く程度のソフトな刺激だけで、驚くほど関節が伸びました。
180度までとはいきませんが、これだけ変化があれば、嬉しい驚きではないでしょうか。
施術のベースとなっているのは「筋膜リリース」のテクニックです。
*筋膜リリースとは?滑走性がカギ!
筋肉や関節が硬くなると、つい強く揉んだり、無理に動かしたくなるもの。しかし、筋肉と筋膜の“癒着”によって動きが制限されているケースでは、実は強い刺激が逆効果になることもあります。
重要になるのは「筋膜の滑走性」です。
▪筋膜の滑走性とは
筋膜とは、筋肉を包んでいる非常に薄い膜のこと。この筋膜と筋肉、または筋膜同士の間に適度な“すべり”があることで、それぞれがスムーズに独立して動けるのです。
この滑走性が失われると、筋肉が思うように伸びず、関節の柔軟性が低下したり、慢性的な痛みやコリに繋がります。
*なぜ滑走性が低下するのか?
日常の動きの中でも、滑走性の低下は起こり得ます。
- デスクワーク後に腰が伸びづらい
- 同じ動作の繰り返しで筋肉がパンパンに
- 精神的ストレスを感じたときに身体が硬くなる
- 実は脱水症状でも筋肉は硬くなります
これらはすべて、外傷や腫れがないにも関わらず、筋膜が癒着して不調のもとになっている可能性があります。
*滑走性の回復にはソフトな刺激を
ベッドのシーツを伸ばすとき、端をやさしく引くとシワが伸びますよね。筋膜リリースもそれに似ています。硬い部分を直接刺激するのではなく、つながりのある部位を優しく引き続けることで、癒着が自然と剥がれていきます。
人は怖さを感じると身体がこわばるもの。だからこそ、優しい刺激が効果を発揮します。
*鍼灸との組み合わせも有効
実は鍼灸も、筋膜リリースに非常に適しています。
2000年以上の歴史がある鍼灸は、患部から離れた部位を刺激することで、身体に変化をもたらす技術です。
筋膜をリリースする際の鍼は、浅く刺すことがコツだったりします。私は、慢性的な癒着に対しては手技と鍼を併用しています。
*まとめ
今回の肘の症例だけでなく、仰向けで寝た際に膝が伸びきらない方、実は少なくありません。一回の施術ですべて改善するのは難しいかもしれませんが、筋膜は全身に繋がっています。
たとえ手や足の一部分だけでも可動域が広がれば、意外なところにも好影響を及ぼし、身体全体が軽くなることがあります。
О脚・X脚でお悩みの方にも、筋膜リリースは一度体験してみる価値がありますよ。