肩こりは、現代人にとって最も身近な不調のひとつです。デスクワーク、スマホ、ストレス、運動不足etc。

原因は多岐にわたりますが、私が臨床の中で重視しているのは、単なる筋緊張としての肩こりではなく、「肩の状態がその人の心身全体を映し出している」という視点です。

🍀肩診という発想
東洋医学には、脈診・腹診・舌診・頸診など、身体の各部を通して全体を診る技法があります。私はそこに「肩診」を加えたいと思っています。肩の力が抜けているかどうか、それはその人の呼吸の深さ、心の緊張、そして治療の効果を測るうえで、非常に重要な指標になるからです。

♨ 温泉と「はぁー」の呼気
温泉につかって十分に温まったとき、人は自然に「はぁ~」と深く息を吐きます。その瞬間、頭の中のもやもやや仕事のストレスは一時的に消え、心は空っぽになります。そして、肩の力がふっと抜ける。    これは単なるリラックスではなく、心身が本来のバランスを取り戻す瞬間です。
この「肩の力が抜ける」という現象は、治療のゴールでもあると私は考えています。          どんなに理論的に正しい施術でも、肩が緊張したままなら、それは本当に身体にとって良いことなのでしょうか? 私はそこに疑問を感じています。

🍀 ツボと肩の反応
全身には約360個のツボがあるとされていますが、その人にとって「効く」ツボに触れたとき、肩の力が抜け、呼吸が深くなることがあります。これは、身体が「受け入れた」証です。逆に、どんなに確立された治療法でも、肩がこわばったままなら、それは身体が拒否しているサインかもしれません。

🍀治療とは、肩の力を抜くこと
私が理想とする治療とは、肩の力が自然に抜け、深い呼吸が生まれるような施術です。それは筋肉だけでなく、神経系、感情、思考、そしてその人の「今ここ」に働きかけるものです。肩は、心身の緊張を最も素直に表現する場所。だからこそ、肩を診ることは、全体を診ることにつながるのです。