楽居堂に来られた患者さんに「なぜこの場所を触るんですか?」と聞かれることが多いのが、お腹の右側、ちょうど”右の肋骨の下あたり(右季肋部)”です。
一見、肩こりや腰痛とは関係なさそうなこの場所を、なぜ私は重要視し、どんな症状の方にも丁寧に施術するのか? それは、この場所の奥に、全身の健康を司る「ある重要な臓器」があるからです。
その臓器こそが、人の体にとっての「化学工場」であり「解毒センター」である【肝臓】です。
1. 肝臓が「疲れている」と全身に不調が出る理由
肝臓の主な仕事は、私たちが食べたものからエネルギーを作り出し、体に入ってきた毒素や老廃物を無害化して体外へ排出することです。
現代社会では、ストレス、睡眠不足、加工食品、アルコールなど、肝臓が処理しなければならない負担が増え続けています。肝臓が疲れて動きが鈍くなると、以下のような悪循環が起こります。
- 血流が悪くなる: 肝臓に血液が集まり過ぎたり、周辺の筋肉が緊張したりすると、肝臓への血流が悪化します。
- 毒素が残る: 解毒が追いつかず、老廃物や炎症物質が全身を巡りやすくなります。
- 全身の不調へ: これがニキビや肌荒れ、慢性的な疲労感、イライラや自律神経の乱れ、関節の炎症(リウマチなど)を悪化させる一因にもなり得ます。
2. 右季肋部の「ハリ」を緩める鍼灸のチカラ
お腹を触診すると、肝臓の疲労や周囲の緊張を、右季肋部の「硬さ(ハリ)」や「張り」として感じ取ります。この硬さを施術で緩めることには、3つの大切な意義があります。
🌿 【意義1】血液の循環改善
硬くなった右季肋部やその周りの筋肉に鍼やお灸でアプローチすることで(主に足から)、血管が広がり、肝臓への血液の流れがスムーズになります。新鮮な血液が送られ、老廃物が流れ出ることで、肝臓の解毒機能が活性化します。
🧘 【意義2】自律神経のリセット
肝臓は自律神経の影響を強く受けます。右季肋部をゆるめる刺激は、体を休ませる副交感神経を優位にさせ、深いリラックス状態を導きます。これにより、ストレスで緊張していた肝臓が「ホッと一息」つき、本来の働きを取り戻しやすくなります。
🌬️ 【意義3】深い呼吸を助ける
右季肋部のすぐ上には、呼吸を司る横隔膜があります。この周辺を緩めることで、横隔膜が大きく動き、呼吸が深くなります。深い呼吸はそれ自体が全身をリラックスさせ、横隔膜の動きが肝臓をマッサージする効果も生み出します。
まとめ
私は「肝臓を元気にすること」は、単なる内臓ケアではなく、「体が本来持つ回復力と自己治癒力を最大限に引き出す」ことだと考えています。
あなたの肩こりや腰痛、頭痛などの症状の背景には、もしかすると頑張りすぎた肝臓の疲労が隠れているかもしれません。右季肋部の施術は、その隠れた根本原因にアプローチし、心身ともに健やかな状態へ導くための、欠かせない大切な一手なのです。ぜひ、施術後の右季肋部の変化を感じてみてください。