鍼灸院に来られる方の中には、**ED(勃起不全)**の悩みを抱えている方もいらっしゃいます。EDというと「自信がない」「ストレス」といった精神的な問題や、循環器系の問題を思い浮かべがちです。

しかし、当院では過去の経験から、EDでお悩みの方の多くが慢性的なお腹の不調、つまり”過敏性腸症候群(IBS)”を併発しているケースが多いことに気づいています。

当院がEDの施術を行う際に、まず「胃腸」を整えることを重視する、その理由についてお話しします。


1. なぜ「お腹の不調」が男性の活力に影響するのか?

IBSは、自律神経の乱れからくる「脳腸相関」の異常が原因です。この乱れが、EDに深く関わる二つの重要な要素を妨げます。

A. 活力の源となる「栄養吸収」の低下

東洋医学では、胃腸を「脾胃は後天の本(飲食物から生命エネルギーを生み出す源)」と考えます。

  • IBSの状態:下痢や便秘を繰り返すIBSの腸は、炎症を起こしていたり、蠕動運動が不安定であったりするため、食事から栄養を効率よく吸収できていません。
  • EDへの影響:栄養がしっかり吸収されなければ、全身の細胞、特に性機能や活力を維持するために必要なエネルギー(気・血)が不足します。土台となる活力が弱っている状態で、自信や機能だけを回復させるのは難しいのです。

B. リラックスを司る「副交感神経」の機能低下

勃起は、心身がリラックスしているときに優位になる副交感神経の働きによって起こります。

  • IBSの状態:IBSは、仕事や人間関係のストレスにより、交感神経が常に過緊張していることで発症・悪化します。
  • EDへの影響:交感神経が優位な状態が続くと、血管が収縮し、勃起に必要な血流の供給が妨げられます。また、常に「お腹の調子が悪くなるかもしれない」という不安や緊張感が、副交感神経への切り替えがうまくいかず、リラックスできない状態が続きます。

2. 鍼灸がIBSとEDに同時にアプローチできる理由

当院の鍼灸治療は、EDという主訴に対し**遠回りなようで実は近道となる「腸活」**を提案します。

① 自律神経の根本調整

鍼灸には、過敏になっている自律神経(交感神経)の緊張を緩め、副交感神経を優位にする作用があります。

  • 具体的なアプローチ:お腹のツボ(天枢など)、消化器系の調整に重要な足三里に加え、リラックス効果の高い耳ツボ(神門、交感など)を使い、全身の緊張を緩和します。これにより、腸の過敏性が落ち着きリラックスしやすい身体へと導きます。

② 骨盤内の血流改善と活力の回復

腸を整えることと同時に、EDに直接関わる骨盤内の血流も改善します。

  • 具体的なアプローチ仙骨腎・肝のツボ(東洋医学で活力を司る)への穏やかな刺激により、硬くなっていた骨盤周辺の深部組織が緩み、血流が回復します。腸の緊張が解けることで、骨盤内の環境も整い、勃起に必要な機能と活力が回復しやすい状態になります。

まとめ:土台から整える鍼灸の力

EDの治療は、表面的な症状の改善だけでなく、**自信や活力という「土台」**を立て直すことが不可欠です。

「お腹の具合が悪い人が、自信なんて持てない」―これは、長年多くの患者さんを診てきた知り合いの薬剤師さんの言葉ですが、まさに真理です。

お腹の調子が安定し、不安や緊張から解放されることで、心身ともにリラックスできる状態を取り戻す。その結果として、EDの改善はもちろん、日常生活のパフォーマンス向上自信の回復にもつながります。

お腹の不調とED、鍼灸による体質改善を試してみませんか?